Codex は「コードを書くための AI」と紹介されることが多いですが、実務で使われるのは、資料のための集計、数字の分析、小さな便利ツールづくりなど、コードが手段であって目的ではない仕事です。

この記事では、株式会社デジライズが法人導入支援で対象になりやすいと考えている3つの業務を、Codex への「依頼」「途中確認」「成果物」の流れで整理します。効果の大小はデータや業務で変わるため、数値による断定はしません。

Codex を業務で使うときの共通の流れ

Codex は ChatGPT デスクトップアプリ(Codex モード)、Codex CLI、IDE 拡張、Codex cloud の形で提供されています。非エンジニアの方は、デスクトップアプリで「Codex」を選び、パソコン上のフォルダをプロジェクトとして接続する使い方が入口です。(出典: GlossaryModesProjects

作業の流れは、どの業務でも次の3段階です。

  1. 依頼: 目的、入力ファイル、期待する出力の形を日本語で伝える
  2. 途中確認: 承認を求められた内容と、途中で出てくる集計の前提を確認する
  3. 成果物: 出来上がったファイルと変更内容を確認し、元データと突き合わせる

鍵になるのが「途中確認」です。Codex には Sandbox Mode(技術的に何ができるか)と Approval Policy(いつ許可を求めるか)の二層の仕組みがあり、既定ではプロジェクトのフォルダ外への編集や、ネットワークが必要なコマンドは承認を求めます。ネットワークも既定では無効です。デスクトップアプリの Permissions は「Ask for approval」が既定で、業務ではこのまま始めることをおすすめします。(出典: Agent approvals and securitySandboxingPermission modes

成果物は、デスクトップアプリの Review panel で変更差分を見るほか、文書・プレゼン・スプレッドシート・PDF・HTML をチャットの横でプレビューし、注釈で修正指示を出せます。コードが読めなくても「何が変わったか」「どう見えるか」はここで確認できます。なお Review panel は、プロジェクトのフォルダが Git リポジトリになっている場合に使えます。まだ Git リポジトリでない場合はアプリが作成を案内するので、最初に作成しておいてください。(出典: Code reviewArtifacts viewer

業務1: 資料作成(CSV 集計からレポートへ)

もっとも取り組みやすいのが、売上や問い合わせの CSV を集計して定例会議用のレポートにまとめる業務です。

依頼のしかた

依頼文には次の4点を入れると、解釈のぶれが減ります。

  • 入力: 「このフォルダの sales_2026-08.csv を使う。1行目は見出し、文字コードは UTF-8」
  • 集計の定義: 「月次売上を支店別、商品カテゴリ別に合計する。statusreturned の行は返品なので除外する」
  • 出力の形: 「集計表を Excel に、要点3行の Markdown レポートを同じフォルダに作る」
  • やってほしくないこと: 「元の CSV は書き換えない。集計用の別ファイルを作る」

「返品を除外する」「元ファイルを触らない」のような業務のルールを Codex は知りません。自分では当たり前の前提ほど明文化して渡します。

途中確認のポイント

Codex は集計用のスクリプトを書いて実行します。Excel を作る部品の導入などネットワークが必要な操作は承認を求めてくるので、依頼の範囲内かを読んでから許可します。「日付の列が2つあるがどちらを使ったか」「金額に税が含まれるか」といった Codex 側の判断も途中の説明に書かれるので、ずれていればその場で訂正します。

成果物と確認すべきこと

  • 合計値: 集計表の総合計が、元の CSV を表計算ソフトで合計した値と一致するか
  • 除外条件: 除外したはずの行が除かれているか、件数で確認する
  • 列の意味: 見出しが社内の呼び方と一致しているか
  • 元ファイル: 元の CSV が変更されていないか(Git リポジトリ化していれば Review panel で差分が出ていないことを確認。していなければファイルの更新日時とサイズで確認)

流れが固まったら、依頼文を社内の手順書として残しておくと翌月以降も再現できます。Codex には作業の手順と関連資料をひとまとめにして呼び出せる Skills の仕組みもあり、ワークスペースの設定で許可されていればチームで共有できます。(出典: Skills and plugins

業務2: データ分析(傾向をつかみ、仮説を検証する)

集計の次の段階が、数字から傾向を読み取る分析です。「先月の解約が増えた理由を知りたい」のような問いを、段階的に分解して進めます。

依頼のしかた

  • 第1段階: 「解約データを月別に並べ、直近6か月の推移を表とグラフにして」
  • 第2段階: 「増えている月について、契約プラン別、契約期間別に内訳を出して」
  • 第3段階: 「内訳から読み取れる仮説を3つ挙げ、確かめるにはどの列を見ればよいか説明して」

1回の依頼を小さくすると、途中の表を見てから次の指示を出せるため、誤った前提のまま進むことを防げます。

途中確認のポイント

分析では「欠損値をどう扱ったか」「外れ値を除いたか」「割合の分母は何か」といった処理の前提が結論を左右します。「処理の前提を先に箇条書きで示してから実行して」と依頼しておくと、途中確認がしやすくなります。

成果物と確認すべきこと

  • 分母と母数: 割合が出ているときは、何を分母にしているかを必ず確認する
  • 期間の境界: 「直近6か月」がいつからいつまでか、月末締めか日付締めかを確認する
  • 相関と因果の区別: Codex が挙げる「仮説」は、確かめる前の仮説として扱う
  • 再現性: 同じ依頼をもう一度実行して、同じ結果が出るかを確認する

業務3: 社内向けの小さな業務ツール開発

3つ目は、「毎週手作業でやっている変換を自動化したい」といった社内向けの小さなツールづくりです。成果物がプログラムになるため、確認の観点が変わります。

依頼のしかた

最初に「何を入れたら何が出るか」を1文で決めます。

  • 入力: 「経費精算の CSV(列は日付、部署、科目、金額、備考)」
  • 出力: 「科目ごとの月次合計と、金額が上限を超えている行の一覧」
  • 使い方: 「ファイルをフォルダに置いて実行すると、結果ファイルが同じフォルダに出る」
  • 制約: 「外部サービスには接続しない。社内のパソコンだけで動く」

「まず動く最小の版を作り、確認してから機能を足す」と伝えると、確認の単位が小さくなります。

途中確認のポイント

ここでも承認画面が出るので、依頼した範囲内の操作かを確認します。とくにネットワーク接続を伴う操作は、社内データを扱うツールでは依頼にない限り許可しない運用が安全です。(出典: Sandboxing

「テスト用のサンプルデータを作った」「エラーが出たので修正した」という説明が出たら、サンプルが実データを元にしていないか、修正で仕様が変わっていないかを確認します。

成果物と確認すべきこと

  • 動作確認: 答えが分かっているテスト用データで結果を確認する
  • 変更範囲: Review panel で、変更ファイルが依頼したツールの範囲に収まっているかを見る
  • 使い方の文書: 「どこにファイルを置き、何を実行するか」を Codex に書かせる
  • 保守の担当: 動かなくなったときに誰が見るかを決めてから配布する

定期処理は Scheduled tasks で時間ベースに実行できます。ただしデスクトップアプリでローカルのファイルを扱う場合、実行時にパソコンとアプリが稼働している必要があります。(出典: Scheduled tasks

3つの業務に共通する確認事項

各業務の「確認すべきこと」を表にまとめました。導入時のチェックリストとして使ってください。

観点 資料作成 データ分析 業務ツール開発
依頼前 除外条件と出力形式を明文化 問いを段階に分ける 入力と出力を1文で決める
途中確認 承認内容と集計の前提 欠損・外れ値・分母の扱い 承認内容とサンプルデータの出所
成果物 総合計と件数の突き合わせ 期間の境界と仮説の扱い テストデータでの動作と変更範囲
元データ 上書きされていないこと 上書きされていないこと 実データを試験に使わないこと

加えて、会社として押さえるべきなのがデータの扱いです。OpenAI の公式ヘルプでは、ChatGPT Business、Enterprise、Edu、API は既定で入力や出力をモデル改善に使わない一方、Plus と Pro はデータコントロールで学習をオフにしない限り会話が学習に使われる場合があると記載されています。また、ローカル実行でもファイルの抜粋やプロンプトは処理のために OpenAI へ送信されるため、「ローカル実行=社外に出ない」ではありません。顧客情報を扱う前に、利用プランと設定を確認してください。(出典: Using Codex with your ChatGPT planChatGPT Work local security

デジライズの支援について

株式会社デジライズでは、Codex の法人導入支援として、対象業務の選定、依頼文と確認手順の設計、部門への展開、管理者向けの設定方針までをお客様の業務に合わせてご支援しています。「どの業務から始めるか」という段階からのご相談も承ります。支援内容と費用は個別にお見積もりしますので、まずはお問い合わせからご相談ください。