Codex の法人導入で最初に聞かれるのは、性能ではなく「勝手に何をされるのか」です。ファイルを書き換えるのか、社内のネットワークに出ていくのか、どこで人が止められるのか。ここが曖昧なままだと、現場に配ることも、情報システム部門として承認することもできません。

この記事では、株式会社デジライズが導入支援で最初に説明している「サンドボックス」と「承認ポリシー」の関係を、OpenAI の公式ドキュメントに書かれている範囲だけで整理します。設定名は公式の表記をそのまま使います。

サンドボックスと承認ポリシーの二層構造の図解。サンドボックスは技術的にできる範囲で既定は workspace-write、承認ポリシーは聞かれる範囲で既定は on-request、ネットワークは既定で無効。
できる範囲(サンドボックス)と聞かれる範囲(承認ポリシー)は別の設定。ネットワークは既定で無効。

二層で考える: できる範囲と、聞かれる範囲

Codex の挙動は 2 つの設定の組み合わせで決まります。

  • サンドボックス: 技術的に何ができるかの境界
  • 承認ポリシー: 境界に触れるとき、いつ人に聞くか

公式ドキュメントは、サンドボックスを「エージェントがあなたのマシンへ無制限にアクセスすることなく、自律的に動作できるようにするための境界」と説明しています。コマンドはフルアクセスではなく、制限された権限で実行されます。(出典: Sandboxing)

この 2 つを分けて理解しておくと、「承認をゆるめる」話と「できることを広げる」話を混同せずに済みます。

サンドボックスの 3 つのモード

公式ドキュメントには 3 つのモードが記載されています。

モード 記載されている内容
read-only エージェントはファイルを調べられるが、承認なしにファイルの編集やコマンドの実行はできない
workspace-write ファイルの読み取り、ワークスペース内での編集、その境界内での通常のローカルコマンドの実行ができる
danger-full-access サンドボックスの制限なしで動作し、ファイルシステムとネットワークの境界が外れる

ローカル作業の既定は workspace-write です。(出典: Sandboxing)

法人で決めるべきことは単純です。danger-full-access を既定にしない。この 1 点を先に合意しておけば、残りは運用の話になります。

既定の組み合わせ

公式ドキュメントには、既定の構成として sandbox_mode = "workspace-write" と approval_policy = "on-request" の組み合わせが記載されています。(出典: Sandboxing)

この状態で何が起きるかを、承認側のドキュメントと突き合わせると次のようになります。

承認なしで進むこと

標準の Auto プリセットでは、Codex はワークスペース内でファイルを読み、編集し、コマンドを実行できます。サンドボックスの内側にとどまる操作は、追加のレビュー手順なしに続行されます。(出典: Agent approvals and security)

つまり「接続したフォルダの中は自動で進む」が前提です。だからこそ、最初に接続するフォルダの選び方が実質的なガードレールになります。

承認が必要になること

既定では、次の操作に承認が必要です。(出典: Agent approvals and security)

  • ワークスペース外のファイルを編集する
  • ネットワークアクセスを必要とするコマンドを実行する
  • 副作用があると宣言しているアプリ(コネクタ)のツール呼び出し
  • 破壊的なアプリ/MCP のツール呼び出し

ネットワークの既定

公式ドキュメントには「既定では、エージェントはネットワークアクセスを無効にした状態で動作します」と明記されています。ローカルの Codex では、workspace-write のサンドボックスにおいてネットワークは無効のままで、network_access = true のような設定で明示的に変更しない限り有効になりません。(出典: Agent approvals and security)

「既定で無効」であって「無効化できない」ではない点が重要です。設定と承認の両方を運用の対象にしてください。

設定の変え方と、変えてはいけない前提

挙動はコマンドのフラグ(--sandbox workspace-write --ask-for-approval on-request のような指定)や設定ファイルから変更できます。また approvals_reviewer = "auto_review" を設定すると、条件を満たす承認要求をレビュー担当のエージェントへ回せます。(出典: Agent approvals and security)

ここで押さえておきたいのは、承認の担当を変えることと、サンドボックスを広げることは別だということです。承認フローを自動化しても、read-only や workspace-write の境界そのものが動くわけではありません。逆に言えば、境界を締めておけば、承認運用を多少ゆるめても被害範囲は限定されます。

法人で先に決めておく 3 点

  1. 既定のサンドボックスモード: workspace-write を既定とし、danger-full-access は原則禁止にする。例外を認める場合は、対象環境・期間・承認者を残す
  2. ワークスペースの切り方: 自動で進む範囲はワークスペースの中です。基幹データの原本が入ったフォルダを直接つながない運用にする
  3. ネットワークを有効にする条件: 既定は無効です。有効化が必要な業務を洗い出し、誰の承認で有効にするかを決める

この 3 点は、組織としての統制全体から見ると入口の部分です。ロールや監査の設計まで含めた全体像はCodex の法人セキュリティとガバナンスの記事に、導入前に確認する項目の一覧はCodex 法人導入チェックリストにまとめています。

なお、この記事の内容は公開時点の OpenAI 公式ドキュメントで確認した範囲です。設定名や既定値は変わることがあるため、社内規程に落とし込む前に最新の記載をご確認ください。デジライズでは、この設計を含めた導入支援のご相談を承っています。